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福岡市 FP教室講師のブログ

FP社労士がファイナンシャルプランニングの学習を勧めたり、労務についてコメントするブログbyTWO-FACE社労士FP事務所(福岡市)-記事冒頭にプロフィールリンク

交渉の手法②

値下げ

交渉についてのシリーズの2回目は値下げ交渉の余地について解説していきます。 交渉の中でも値下げ交渉はイメージしやすいものではないでしょうか。 どんな時に値下げ交渉の余地が小さいのか、あるいはどんな時に大きいのかを見ていきます。

 

値下げ交渉の余地の小さい取引

診察

例えば医者から医療サービスを受ける場合には値下げ交渉の余地はほとんどないといえるでしょう。 それは医者の機嫌を損ね、手を抜かれたらかえって損だという考えが働くからです。 値下げ交渉どころか、逆に菓子折りや謝礼金を持参して医者の機嫌を取る文化さえあります。

医者に値下げ交渉をしない理由は他にも、医者は最善の治療をしているはずであり、 医療保険制度上の適正な価格で提供しているはずだ、と医者の高潔さや医療制度の仕組みを信じているからといったこともあるでしょう。

これは私たちが医療や医療制度を体系的に学んだことがなく、医者や医療を盲目的に信じざるを得ないことも一因です。 このような状況では、もしも医者を信じられなくなった時にはセカンドオピニオンの手法をとることになります。 セカンドオピニオンも医者に対して最善の治療を促す交渉術といえるでしょう。

同様に大工さんや顧問税理士などの専門家との取引においても、サービスの低下への懸念から値下げ交渉をしづらいという状況が起きやすくなっています。 これらに共通するのは、事前の交渉の状況が受けるサービスの質に直結する(あるいは直結するかもしれない)からということと、さらに相手と専門知識の差が大きいためにサービスの質について検証が難しいからということです。

大工さん相手に値下げ交渉をして、大工さんの機嫌を損ねたならば工事の見えないところで手を抜かれるかもしれません。 そして手を抜かれたとしても素人である私たちはどこで手を抜かれたかわからないのです。 このように 、サービスの質にブレがある取引 やサービスの質の検証が難しい取引 は値下げ交渉の余地が小さいといえます。 検査

しかし、これらの取引が値下げ交渉をしづらいからといって交渉をしてはいけないわけではありません。

大工さんの例では値下げ交渉をした後に、成果物に対して検査機関の協力を得ることで成果物の検証をしてもいいでしょうし、自身の知識に自信があるのならば工事の様子に興味があるといって見学させてもらうのも手でしょう。

もちろん検査機関のサービスを受けるならばその対価が必要ですし、見学をするには知識も時間も必要です。 問題に対して対策をとる時には、その対策についてもメリットデメリットを検証する必要があり、さらにその対策を含めた仕組み全体のコストパフォーマンスについても検証する必要があります。

この思考方法は慣れないうちは難しいのですが、慣れれば、問題、対策、検証を繰り返していくことでより良い仕組みを生み出すことができ、様々な場面で応用することができますので、ぜひ意識して身に着けていってみてください。 交渉の余地の小さい取引であっても、工夫次第では交渉をすることができるのです。

交渉の余地の大きい取引

ここからは逆に交渉の余地が大きい取引の特徴を見ていきます。 結論としては、交渉の余地の大きい取引とは、

・受ける予定のサービスに質のブレが少ない

・金額が大きい

・相場が曖昧

・競合が多い

・権限を持つ人と交渉できる

といった特徴を持つ取引です。 ひとつずつ詳細を見ていきたいと思います。

受ける予定のサービスに質のブレが少ない

製造ライン

これは値下げ交渉の余地の小さい取引の逆ですね。 例えば自動車のような規格のある製品に完成品の質のブレが生じることは少ないでしょう。 また吊るしのスーツのような工業製品も手元で完成品を検品できるので、受ける予定のサービスに質のブレは生じません。 このような場合には受ける予定のサービスの低下を恐れて交渉をしづらいという状況は起きにくくなります。

金額が大きい

売価販売数

次は金額の大きさが値下げ交渉の余地につながる場合を解説いたします。

商売人は原価に利益を乗せた売価で商品を販売しています。

100円で売られている商品は、原価率40%の場合、仕入れ値の原価40円に利益の60円を乗せて販売されているといったイメージです。

また、売価は安いものは売りやすく、高いものは売りにくいです。 100円のものは日に10,000個売れるけれども 1,000,000円のものは日に1個しか売れないといったことです。 高額商品は1個が売れるか否かが、利益が0円か60万円かの大きな違いになるのです。(原価率40%の場合。)

もしも90万円でしか買わないという客がいれば、売り手は売れないよりはましだと考えて売価90万円の時の利益50万円で納得するかもしれません。

一方、100円のものを売る低額商品の売り手は、同じ原価率40%で1日50万円の利益で納得しようかなと思っても、 90円に値切る人を10,000個分対応するのは大変です。 10,000個分の交渉に対応するくらいならば、初めから値を下げようと考えます。 買い手も低額商品を値切ろうとは考えないでしょう。

金額が小さいほど値下げ交渉の余地が小さく、金額が大きいほど値下げ交渉の余地が大きくなっています。

相場が曖昧

gennya

相場が曖昧なものの典型例は土地です。 土地は同じものが二つとないため、値段のつけ方が難しくなっています。

地価公示や路線価、売買事例、不動産鑑定評価基準など多くのヒントがありますが、専門知識が必要なうえ、土地の取引は個別性が高く、相場が曖昧になりがちになっています。

相場が曖昧というのは土地Aについて不動産屋から2,000万円です、といわれればそのような気もするし、 同じ土地Aについて3,000万円といわれればそんなもんなのかな、と思ってしまうような状況です。

そのように曖昧な値段ですので値段を吹っかけられることも多く、逆に言えば値下げ交渉の余地が大きくなっています。

また、相場が曖昧なものの典型例の一つに頭脳労働、教育サービスというのがあります。 例えばコンサル料金、家庭教師などです。これはサービスの質が千差万別なので妥当な金額の相場が形成されにくくなっているのです。

競合が多い

次は競合が多いと値下げ交渉の余地が大きくなる場合について解説していきます。 これは特に、過去の金額の合意が継続するサービスにおいて、新規申込者へ提示する値が下がっている場合に顕著に表れます。

この典型例は銀行の住宅ローンです。 古い契約を継続している人は何もしなければ、相場が下がっているにもかかわらず、ローンの値段である金利が高いまま、高い利息を払い続けることになります。 そこで他の銀行へ借り換えることで現在の相場で借りることができます。これがローンの借り換えです。

また実際に借り換えをしなくとも審査に通過することで(あるいは審査を通過できる状況にあることで)現在の銀行に「金利を下げてくれないと他行に行っちゃうよ」と値下げ交渉をすることができるのです。 住宅ローンはまさに現在この状況にありますので、対象になりそうな人は借り換えを検討してみてください。

ところで、どんな場合に値が下がるのでしょうか。 値段は需要と供給のバランスによって決まります。 具体的には、モノAを100万円で買いたい人と、モノAを100万円で売りたい人が取引成立することでモノAの値段は100万円と決定されるのです。

モノAの値段が下がるのは(1)モノAが100万円では高すぎるとして買う人がいなくなった場合と、(2)モノAを100万円でなくてもいいから売りたいという人が出てきた場合です。

(1)モノAを100万円で買いたい人がいなくなった場合、100万円で売りたい人がいても取引は成立しません。しかし、99万円ならば買ってもいいという人がいる場合に、売り手が妥協することで99万円で取引が成立し、モノAの相場は99万円に値が下がります。

(2)モノAを100万円でなくてもいいから売りたいという人が出てきた場合というのは、売り手の中に新規参入者やシェアを拡大したいという人が出てきた場合です。周りが100万円で売っている中99万円で販売すれば、買いたい人はそちらへ流れます。そこで取引が成立することでモノAの相場は99万円に下がります。 競合が増え、抜きんでようとする人が出てくると、それだけでこのようにモノの値段は下がります。加えて、競合が増えるとサービス競争も熾烈化するため、サービスの一種である値下げ交渉の敷居も下がるのです。

この典型例は携帯電話キャリアの業界における通話定額サービスです。 LINEなどの新規参入企業のプレッシャーにより通話定額サービスを開始したのです。 営利企業においては理由もなく値下げすることはありません。 その背景には必ず何らかの意図や背景があることを覚えておいてください。

以上は単純化したモデルで説明しましたが、詳しくは「受給曲線」などで検索してみてください。経済学上の理論を説明したサイトがたくさんあります。 ただし、経済学の話はややこしくて敷居が高いと感じる方も多いでしょう。 単純に、売り手が強いと値段が上がり、買い手が強いと値段が下がる、と考えてもよいと思います。

値下げの権限を持つ人と交渉できる

ピラミッド2

金額が大きい、相場が曖昧、競合が多い、といった値下げ交渉の余地が大きい取引の特徴を見てきましたが、これらの条件を満たす取引であっても値下げの権限を持つ人と直接ないし間接的にでも交渉できなければ値下げ交渉の余地はないといえるでしょう。

もしもあなたが値下げ交渉をできる取引で、値下げ交渉をできる立場にあり、その担当者が話にならないという状況ならば迷わずに責任者を呼び出すべきです。 しかし、この対応はいわば「責任者を出せ」というトゲがあるものにも繋がりやすい対応ですので、自分の考えに間違いがない場合にのみ慎重かつ丁寧にとるようにしてください。

 

総額思考

見積もり2

最後にもう一つ、値下げ交渉の余地を考える際のポイントとして総額で考えるというものがあります。

高額な取引には諸費用がつきものです。本体価格を値下げできたとしても、その金額以上費用が上昇していたら意味がありません。これを防ぐためには明細を確認し、各項目の意味、金額について理解することが必要なのです。

単純な金額の増減だけでなく、時間のずれ、サービスの変更などポイントをわけて理解を整理するようにして、知らず知らずのうちに朝三暮四のような状況になってしまわないように気を付けましょう。  

交渉の余地の大きい取引の具体例

以上に値下げ交渉の余地を見てきました。 見てきた要素を満たす値下げ交渉の余地が大きい取引の具体例をリストアップするならば以下のようになります。 ・不動産 ・自動車 ・家電 ・高額ローン などです。

これらのほか、多少趣旨は変わりますが滞納している税金や借金についても、実は困窮の度合いによっては交渉の余地があります。 取引のその場その場で考えることで、交渉の余地の大きさを見抜くスキルを身に着けましょう。

値下げ交渉も双方が得する妙案のひとつ

この記事で見てきたような値下げ交渉は一見、一方が得をすれば他方が損をするような戦いの交渉に見えます。

しかし、実はそうではないのです。高額商品の話と、モノAの話を思い出してください。 値下げ交渉によって売り手の利益が減ったとしても、それはそれで売り手にとってメリットがあり取引に納得できるから値下げに応じるのです。

そのように考えれば値下げ交渉も、1日目で紹介した双方が得する妙案の一種であると言えるのです。 ぜひ、この記事を参考にして双方が得する妙案となり得る金額に持っていく交渉にチャレンジしてみてください。

(福岡 東京)TWO FACE社労士FP事務所 社会保険労務士 蓑田隆介

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