保険の出口戦略『請求〜保険金支払』
本日は保険商品の出口戦略について解説していきたいと思います。
保険の出口戦略とは
保険の出口戦略とは、万一のことが起こった時に加入している保険を適切に利用する考え方や行動のことです。
火災保険を例に取れば、家を建てた時に火災保険を選択、加入した時点を入口と表現した時に、その後不幸にも火災という保険事故(保険の用語で保障対象の万一の不幸のこと)が発生し保険金を請求し保険金が支払われるまでを出口と表現しています。
出口戦略が必要な理由は、保険商品によって安心を得ていたはずが、その安心が勘違いであったり、無駄にしてしまったり、裏切られたりする可能性があるからです。
そのようなことが起こりうる要因は「保険に加入する私たち自身のマネースキル」と「保険会社の性質」の二つに分けられます。
保険の出口戦略と私たちのマネースキル
私たち自身のマネースキルが関わる出口戦略についての重要なポイントは
保険商品を理解する
保険商品の概要を覚えておく
保険商品の細則を調べられる
の3つです。 逆に言えばこの3つが不十分であったならば
- 理解していないので概要を覚えられない。概要を覚えられないので保険事故が起こった時に保険金を請求できない。
- 理解していないので概要を覚えられない。概要を覚えられないので保障の対象外の事故についても保障が受けられるのではないかと勘違いしてしまう。
- 保険商品を理解していないので細則の調べ方がわからず、知りたいことを知るためのハードルが高くなってしまい、結果必要な情報の取得を早々に諦めてしまう。
ということが起きてしまいます。
例えばマイホームで子供がテレビ(20万円)を誤って壊してしまった時、あなたならばどうしますか。 テレビメーカーへ保証が効かないかと問い合わせるという方が多いのではないでしょうか。
しかしテレビメーカーは品質の保証はしても、事故への保障はしていないので有償での修理や交換になる可能性が高いでしょう。
そうではなく、マイホームをお持ちの方は家の火災保険の特約で保障されるかもしれないと即座に思い浮かべることができましたでしょうか。火災保険には偶発的な事故による家財への損害についても特約で保障していることがあるのです。
すべての事故について補償の対象になるか否かを覚えるのは大変ですし、専門家でなければ不可能です。しかし「補償の対象になるかも」ということが頭に浮かぶか否かが大きな違いなのです。きっかけさえあれば調べることができるからです。
その意味で保険商品の概要を覚えておく、覚えるために理解しておく、忘れたときのために調べるハードルを下げておくということが重要だといえるのではないでしょうか。
保険会社の性質
もう一つ保険の出口戦略において考えなくてはならないのは保険会社の性質です。端的に言えばその保険会社が保険金の不払いをしないかどうかということです。
保険金の不払いというのは保険会社に本来あってはならないことです。入口と出口の二つがあってはじめて保険商品というサービスは完成するものですので、出口において加入者を裏切るということは保険自体への信頼を損なわせ、保険会社の存続すらも危うくする行為です。消費者にとっては出口こそが保険会社の存在理由なのですから。
しかし、一方で保険会社は入口のお金よりも出口のお金を小さくすることで利益を得ていますので、利益を大きくするために出口のお金を小さくしようとするインセンティブが働くことも事実です。
また、保険事故の個別の状況においては保険金の金額の算定が教科書通りにいかないことも出てきます。さらに保険の加入者(※1)の中には保険金詐欺を企てる不届き者もおり、保険の調査は性善説ではできなくなっています。 (※1この記事では保険事故の対象者となる被保険者とお金を支払う保険契約者をまとめて加入者と呼んでいます。)
保険会社は答えがないものを、騙されないように調査して算定して支払わなければなりません。支払いを小さくするインセンティブも働く状況にあるのです。
そうして起こったのが保険金の不払い問題です。2005年、大手の生命保険会社、損害保険会社において支払われるべき保険金が支払われていなかったとして社会問題となり、監督官庁である金融庁による業務停止などの行政処分も行われました。保険の加入者を裏切る許されない事件です。
保険会社においても反省と改善のための取組がなされていますが、消費者である私たちにとってもそのようなことがあったということは忘れてはいけません。不払いの割合やその後の対応などは、どの保険会社の保険に加入するか決める際の判断材料の一つになるのではないでしょうか。
参考URLを挙げておきます。
保険会社の倒産
保険会社の性質についてポイントはもう一つあります。 それは保険会社がいわゆる「倒産」をしないかということです。
保険契約とは加入者と保険会社の契約であるため、保険会社が倒産してなくなってしまえば、契約の終了や条件の悪化など多くのデメリットが発生してしまいます。 保険会社も会社ですからどの会社も倒産の可能性を持っています。
保険会社の存続に関してどれだけ信用できるかの指標としては格付け会社による格付けやソルベンシーマージン比率が代表的です。さらに分析するならば株式投資と同様に財務諸表や社風、経済情勢などから総合的に判断しなければなりません。
保険会社が倒産したら掛け金のすべてを失う?
生命保険の契約は通常加入者の死亡により保険会社から保険金が支払われて保険契約が終了します。加入者はそれまで保険会社に分割や一括などの方法で保険料を払い込んでいます。
では加入者が生存中に保険会社が倒産してしまったならば、それまで払い込んでいた保険料や掛け金は失われてしまうのでしょうか?
保険会社も会社ですから、会社が倒産し清算する時には会社の清算手続きが行われます。債権者は債権をもとに清算する会社の資産を回収し損をしないように努力します。しかし倒産した会社ですから満額回収できない可能性が十分にあります。
本来は保険の加入者も債権者の一人として清算手続きに参加していくことになります。 これが原則です。しかし実際には保険契約においては後述のパターンになるため、このパターンになることはありません。
保険会社の倒産に備える保険契約者保護機構
保険会社との保険契約においては清算手続きに保険加入者が参加することになる前に、金融庁、裁判所、生命保険契約者保護機構によって他の保険会社に保険契約を移転させる形で加入者は保険契約を継続できるというパターンになります。
この場合、引き継ぐ保険会社の責任準備金の90%が補償されるというルールになっているため加入者にとっては保険の条件が悪化します。保障内容の90%ではないので実際にはさらに大きな条件の悪化となります。
保険会社の倒産を過度に恐れる必要はありませんが、保険会社の倒産は条件の悪化につながるため、倒産しない保険会社を選ぶ必要があるのです。
まとめ
上記を踏まえ、自身のマネースキルを高め保険会社の性質を見極めることで、保険の出口戦略を確かなものにしてください。