糸島市 FP教室講師のブログ

FP社労士がファイナンシャルプランニングの学習を勧めたり、労務についてコメントするブログbyTWO-FACE社労士FP事務所(福岡市)-記事冒頭にプロフィールリンク

「産休育休要員で派遣さんを雇ってもらった。私が復帰したら派遣契約終了、のはずだったんだけど…」のスレに社労士がコメントしてみます

 

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産休育休要員で派遣さんを雇ってもらった。私が復帰したら派遣契約終了、のはずだったんだけど…|ふよふよ速報。|2ちゃんねる生活系まとめブログ

 

スレから読み取れる情報

【概要(想像含む)】

女、30~40代、事務職人事担当、正社員。産休と育休明けより時短勤務で復職し、1年が経過。相談者の産休育休中にその期間限定の代替要員として派遣社員を受け入れ。その派遣社員が優秀であったため産休育休後も契約を延長し、時短勤務となった相談者をサポートすることになっていたが、相談者の産休育休中に新システム導入されたこともあり、さらに能力や労働力に優れる派遣社員は担当業務のメインに、質問者がそのサポートに回るといった逆転が起きている。劣等感や従前より責任ある仕事ができない負い目、疎外感に悩み相談。

 

【子供について】

子はまだ一歳

二人目は、年齢的な事もあって諦めてる。

子はもうすぐ2才、時短は3才までの予定

【家計の財政状況】

仕事辞めたら家計が回らない。う

【業務について】 

だいたい仕事の流れとして、
A→B→C みたいな感じで、Aが終わらないとBができない。
Cを先にできないし、AB同時進行できない。
仕事のボリュームも1人で十分。

いつの間にか派遣さんがメインで私が補助みたいな感じに。 上司も、派遣さんに仕事をふる。

【焦りや不安】

仕事をもらっても残業できないし、またいつ休むかも分からない。別に私いなくてもいいんじゃ?同僚もそう思ってるかも…と、被害妄想が止まらない。

今までメインでやってて自信や責任感があったのもあるかも。
でも、自分が恵まれた立場だということを自覚して
謙虚に働かないと駄目だよね…。

私の目線でのスレに対するコメント

育児休業明けの悩み

質問者さんの状況であっても会社は質問者さんを解雇その他不利益な取扱いをすることはできません。「労働者が妊娠又は出産したこと、産前産後休業又は育児休業等の申出をしたこと又は取得をしたこと等を理由として解雇その他不利益な取扱をすること」は、男女雇用機会均等法及び育児・介護休業法で禁止されているからです。時短がここで規定している解雇不利益の禁止事由に該当することは平成 18 年厚生労働省告示にて示されています。そのほか時間外労働の制限、 深夜業の制限についても同様に禁止事由に該当することが告示で示されています。

しかし法律的な規定はどうあれ、実際の職場においては質問者さんの状況は悩ましいものになることでしょう。

このような状況に関連して二つの視点をここで書きたいと思います。一つは派遣の制度について、もう一つはキャリア形成促進助成金を利用した健全な競争意識についてです。

派遣の制度

派遣については労働者派遣法にてその仕組みや、派遣労働者に関する労働基準法上の内容について派遣先と派遣元どちらが責任を負うのかといった内容が規定されています。

質問者さんの場合、当初会社は派遣元会社と産前産後休業期間中のみという内容で労働者派遣契約を締結していたはずです。年月日で決めるよりも質問者さんの復職に柔軟に対応できるからです。

ところが質問者さんの復職後も派遣社員に居続けてもらうためにその契約を更改したようですね。新しい契約期間は従前の派遣の開始から起算して3年であると予想されます。同一の派遣労働者を、派遣先の事業所における同一の組織単位(いわゆる「課」などを想定) に対し派遣できる期間は、3年が限度であると規定されているからです。

これは質問者さんの時短終了ともほぼ一致しますね。

質問者さんの業務だけで考えたならば、その派遣社員を会社が正社員として雇用する可能性は低いと考えられます。

キャリア形成促進助成金を利用した健全な競争意識

質問者さんの状況は、正社員雇用という安定した食い扶持をめぐる競争が顕在化したものだと見ることができます。派遣労働者側の気持ちは書かれていませんが、少なくとも質問者さんはそう思っているようです。

この競争は、雇用の継続が法律上強力に保護されている正社員においても潜在しています。

この競争における正社員側の対応を二つに分類するならば不健全なものと健全なものにわけることができます。

不健全なものの例としては、スレ内のレスに

 すんげー叩かれるの承知で書く

産休代替でくる派遣って、この会社で正社員になってやる!みたいな奴が多くて本当嫌だわ
正社員が復帰したらとっとと席空けろよ
いつまでも居座ってんじゃねーよ

ちょっと違うかもだけど、自分の産休代替の人は
仕事できない人だといいなと思ってるw

 といったものがありました。とても暗く陰惨な感情です。しかし不健全ではありますが、これも労働者の正直な気持ちでしょう。

しかしこの不健全さはともすれば、いじめや嫌がらせ、後任への引き継ぎサボタージュ、後輩への教育サボタージュといったものにも繋がります。

逆に健全な競争意識とは、例えば質問者さんのような状況を契機として自身の能力やスキルを高めようとするものです。資格の取得や研修の受講のほか、休業中に導入された新システムに対応するなどのキャッチアップも含まれるでしょう。

この取り組みに役立つのがキャリア形成促進助成金です。この助成金は、育児休業取得者による育児休業中の訓練、復職後1年以内の訓練、または妊娠・ 出産・ 育児による離職後、子どもが小学校入学までに再就職した労働者で再就職後3年以内に訓練を実施する場合に会社が助成を受けられるものです。要件を満たす会社に助成することで労働者の育児休業中・復復職後・再就職後の能力アップを促進しています。

訓練内容は、OFF-JTにより実施され、10時間以上あるものとなっています。助成の金額は、H28年4月現在、中小企業であれば訓練費用の3分の2(中小企業以外は2分の1)と賃金1人1時間当たり800円(中小企業以外は400円)です。

自身の能力やスキルを高めようとする活動を密かにやっていてもなかなか会社には伝わりません。こういった制度を活用したいと提言すること自体が会社や周囲に意欲を示すことになり、逆境であっても堂々と育児と仕事を両立することにつながるでしょう。

 

 

TWO FACE社労士FP事務所 社会保険労務士 蓑田隆介