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福岡市 FP教室講師のブログ

FP社労士がファイナンシャルプランニングの学習を勧めたり、労務についてコメントするブログbyTWO-FACE社労士FP事務所(福岡市)-記事冒頭にプロフィールリンク

7割経営者向け「会社解雇俺氏、出勤偽装のためひたすら電車定期期間を往復するwww」のスレに社労士がコメントしてみます

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ryusoku.com

スレから読み取れる情報

【概要(想像含む)】

20代、男、営業職正社員、実家住み。営業成績が悪いことを理由に会社から解雇を予告され有給消化中。解雇を親に知られたくないため出社を偽装し、電車で転職サイトを見ながら無為に時間を過ごしている。苦悩を吐き出したくスレ立て。

 

【解雇の理由】

ミスとかはしてないけど営業の成績悪いって理由で解雇されたったwwwwwwwwwwwww

【転職活動の状況】

次の就職先も見つかってない

ハロワ毎日行くわけじゃないじゃん?
ていうかハロワ行きたくないからいってねえwwwwwwwwwww

スマホで転職サイト見てるけど目が疲れてワロタwwwwwwwww

【経済的な困窮の状況】

貯金0

ちなみに借金16万wwwww

(蓑田補記:貯金が0であることについて)ギリギリまで借金返してると0になるぞwwwwwwww

なるべく金使わないで過ごせる場所が電車しかなかったwwwwwwwwww
貯金あったらせめてネカフェとかいくんだがwwwwwwww

【焦りや不安、苦悩】

次の就職先みつかるまで(蓑田補記:親に解雇を)言いたくねええええええwwwww

電車乗りっぱなしで頭パーになりそうwwwwwwww

まじで(蓑田補記:時間の)無駄だわwwwwww
あああああああ!!!!!wwww

私の目線でのスレに対するコメント

解雇による困窮と苦悩

スレ主の困窮と苦悩は複数の要因が重なって起きています。その要因とは、営業成績の不振により解雇を予告されたこと、無知や成績を残せなかった負い目、実家住みの安心感などから解雇を受け入れたこと、借金があるため直近必要な資金さえ返済に充てており現金等がないこと、転職先が決まっていないこと、親への見栄か反応への恐れなどから現状を打ち明けることができないことなどです。

スレ内のレスにもあるように、リストラされたお父さんが公園でたたずむ様子が連想されます。

私の目線からはこれらの要因の中で主に解雇について述べていきたいと思います。

営業成績の不振を理由に解雇ができるのか

結論から言えば、営業成績の不振を理由にした解雇は難易度が高いです。

スレ主の場合の解雇は普通解雇と言われるもので、悪いことをした場合の懲戒解雇や判例によりルールが確立されている整理解雇と異なり、解雇の根拠が曖昧なため、しばしば紛争を生じるものです。

普通解雇を一言でいうとすれば、企業の維持存続に危険が差し迫っているといった経済上の合理性がない場合において、懲戒処分をすることはできないけれども、会社が労働者をクビにするもの、です。労働者の病気怪我や職務遂行能力の欠如といったものが当てはまります。

スレ主の場合は営業成績の不振という職務遂行能力の欠如を理由に普通解雇がなされていますが、これはしっかりとした手続きを踏まなければ裁判では認められません。

営業職の成績不振による普通解雇が争われた裁判の判例としては、森下仁丹事件、エース損保事件、住友不動産ホーム事件、三井リース事件などがあり、普通解雇が裁判で認められるは営業成績の不振だけでなく、入社の経緯や会社による教育訓練や配置転換といった解雇回避の努力などが必要になります。

スレ主の会社がこういった手続きを踏んだかと言えば、スレ主の書きぶりからおそらく踏んでいないと推測されます。

それでもスレ主は解雇に応じた。応じるべき、あるいは応じた方が良いと思ったから。

スレ主は解雇に応じました。その結果が電車で無為に時間を過ごす惨状ではあるのですが、これはスレ主が判断したことです。

応じた理由としては、解雇の裁判上の有効性に疑問を持たなかったということがひとつにはあるでしょう。

それと同時に、その会社での営業職が向いていないから辞めた方が良いと自ら判断した部分もあったのではないでしょうか。

会社は営業成績が振るわない営業担当はクビにしたい

こちらは会社側の主張です。営業成績が振るわない営業担当をクビにしたいというのは利益を積み上げたいと同義であり、会社にとっては当然の希望ではないでしょうか。

会社側だけでなく、営業成績の良い営業担当や期待通りの成果を上げている他の社員にとっても営業成績の振るわない営業担当は疎ましい存在となりえます。雇用にかかる最低限のコストや採用戦略のため、極端な成果連動型の給与体系は現実的ではなく、そうであるならば営業成績の振るわない営業担当がいるというのは成果をあげている社員から見ると、働かずに自分と同じような給料をもらっているという不満につながるからです。

しかし前述の通り、裁判上の普通解雇は難易度が高いです。

それでも会社が普通解雇を成功させる方法

裁判上有効な普通解雇は難易度が高いです。すると会社は、裁判上ではない普通解雇を目論みます。裁判にならない普通解雇です。スレ主の状況を会社側から見ると裁判にならない普通解雇に成功した場合であると言えるでしょう。

裁判にさせない普通解雇の方法としては、管理職による成績不振の営業担当者への締め付けが考えられます。管理職は成績不振の営業担当を叱責します。その営業担当にとって叱られるという恐怖やストレスは、自身が営業職に適性がない場合、延々と続くことになり、その営業担当者は逃げだしたくなります。この営業担当の逃げ出したくなる気持ちに、会社からの普通解雇は営業担当の背中を押すことになり、営業担当と会社両者の思惑が一致した結果、裁判にならない普通解雇が成功するのです。

管理職は締め付けについて、許容範囲内でぎりぎりを攻める

管理職による成績不振の営業担当者への締め付けですが、これもまた難易度が高い業務です。

成績不振の営業担当者の側から見れば、締め付けという言葉は不当なものに感じるかもしれませんが、これは信賞必罰の必罰の部分であり不当なものではありません。

しかし不当なものではないのはその締め付けが業務の範囲内である場合に限ってのことです。この業務の範囲を外れた締め付けをした時にその管理職は成績不振の営業担当者の反感を買い、事態がこじれます。

そうは言っても、どこまでが業務の範囲内なのかはその時の状況によって変わり、また業務の範囲を超える締め付けは容易かつ効果が大きいということがあるために、管理職による締め付けはしばしば業務の範囲を超えてしまいます。極端な例で言えば成績不振の営業担当者に土下座させることは当然業務の範囲を超えていますが、ストレスを与える効果は絶大なのです。加えて、そういう風に相手を屈服させることを快感に感じる人がおり、(私見ではありますが)営業職の管理職はそのような性向が強いということがあります。

そのような不当な締め付けは、成績不振の営業担当者に反感と付け入る隙を与え、報復が報復を呼ぶ泥沼に突入することにつながります。そのことを考慮して管理職は、法律的に、社会的に、道義的に、相手の感情的に、許容される範囲のぎりぎりを攻めて締め付けを行わなければならず、そのためには許容範囲を学び、そして考えなければならないのです。

グッドコップ・バッドコップの手法

この難易度の高い締め付けの業務を補助する手法があります。それがグッドコップ・バッドコップ(良い警官・悪い警官)の手法です。一般的なグッドコップ・バッドコップの概要は以下の通りです。

 概要

良い警官・悪い警官は、明確に相反するやり方で対象者へのアプローチを行う2人の質問者のチームから構成される。2人の質問者が対象者に対し交互に質問を行う場合と、同時に対面する場合がある。

「悪い警官」は対象者に対し、粗暴な非難や侮辱的な意見、脅迫などの、攻撃的かつ否定的な態度を取り、基本として対象者との間に反感を作り上げる。これにより、対象者に同情的な役割を演じる「良い警官」の活躍の場が整えられる。「良い警官」は対象者に対し支援や理解を示すように見せかけることで、基本として対象者への共感を演出する。また、「良い警官」は対象者を「悪い警官」の締め上げから庇護する。

対象者は「良い警官」への信頼感や「悪い警官」への恐怖から、「良い警官」と協力関係が結べるのではないかと思い込み、結果として「良い警官」へ協力するために、色々な情報を話してしまう。

Wikipediaより引用)

 これを前述の締め付けに応用し、締め付けを実行する管理職とは別の者を成績不振の営業担当の相談相手にし、その者にグッドコップの役割を担わせるのです。グッドコップもまた適度な距離感で営業担当と関係を築く必要があり、かつ法律、社会性、道義面、対人面で能力のある者でなければなりません。このグッドコップには裁判によらない普通解雇だけでなく、社員のメンタルヘルスの維持にも役に立ちます。

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裁判によらない普通解雇の手法の情報発信の是非

この記事をご覧の皆さんの中には上記のような裁判によらない普通解雇の手法を解説することに不快感を覚える方もいるかもしれません。

それでもやはり、余裕のない会社において適性のない若い営業担当が在籍し続けるのは当人にとっても会社にとっても不幸であり、是正すべきものです。裁判によらない普通解雇はその是正の手段の一つであるため、その手法を情報発信することは事業の健全な発達と労働者等の福祉の向上に資するものであると考えます。

最後に再びスレ主の話に戻ると、私がグッドコップ役であったならばスレ主に対し、相談に応じることを通じて管理職の締め付けが適正であることの監視を継続するという積み重ねを前提に、スレ主がその会社での営業担当に向いていないのならば選択肢の多い若いうちに退職して、他の会社や他の職種を目指すことも一つの選択肢であることを伝えます。一方で経済的に困窮しないように返済をし過ぎないことをアドバイスし、転職活動を支援する方策を会社に求めることになるでしょう。これはもはや普通解雇というよりも退職勧奨による合意退職の面が強くなっているものと言えるでしょう。

 

(東京 福岡)TWO FACE社労士FP事務所 社会保険労務士 蓑田隆介

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