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福岡市 FP教室講師のブログ

FP社労士がファイナンシャルプランニングの学習を勧めたり、労務についてコメントするブログbyTWO-FACE社労士FP事務所(福岡市)-記事冒頭にプロフィールリンク

社労士が記事にコメントしてみます 『日本IBM「クビにしたい会社vs残りたい社員」裁判〜法廷の大バトルを完全再現』

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記事の概要

'12年「コストカッター」の異名をとるマーティン・イェッターが米本国のIBM社長に就任した流れの中で、日本IBMの従業員5名も突如としてクビを切られた。これに対し従業員側は解雇の無効を訴え、先日3月28日東京地裁で「原告らに対する解雇は無効である」との判決が下された。記事はこの顛末をリポートしている。

 

記事の内容に対する私の目線でのコメント

【従業員側の主張の一部について】

私は'08年、当時所属していたSTH(セールス・トランザクション・ハブ。営業の後方支援事務を行う部署)で月間MVPを受賞しています。また、'09年にはチームリーダーから感謝状と盾も授与されるほど評価されてきました。

にもかかわらず、今年('12年)7月、具体的理由を告げられることなく解雇されたのです。長時間労働のせいで患っていたうつ病も、これによってさらに悪化しました。

これは従業員Aさんの主張です。解雇の理由が適法であれば、その理由を従業員に告げることなく解雇予告をすること、、解雇予告手当を支給して解雇すること、または労働基準監督署長の認定を受け即時解雇することは適法です。労働基準法上、従業員が証明書の請求をした時にのみ、会社は証明の義務を負います。

しかし理由を告げずに解雇をしようとしても従業員が納得するはずはなく、理由を告げなかったのは、理由を告げることができないなんらかの理由があったのではないかと推測されます。他の従業員へは解雇の理由を告げている描写があることも、この推測を補強します。

Aさんの主張の中からその理由を探そうとすれば、鬱病を患っていることがその理由として該当しそうです。ではAさんの主張の通り長時間労働のせいで、つまり業務上の事由で労働の能力が低下したのだとしたら、そのことを理由に解雇ができるのかということを考えてみます。

労働基準法は、業務上の事由で鬱病にかかり療養のために休業していることを条件に、その期間とその後30日の解雇を禁止しています。

しかしAさんの場合は当時は休業はしていなかったようです。この場合には、私傷病により従前の業務ができなくなった場合の賃金減額の有効性が争点となった片山組事件が参考になります。判例の要旨は、それまでと異なる労務の提供およびその申し出を行い、実際に配置可能な業務があるときは、労務の提供があったものとみなし、これを受領しなかった使用者に対する賃金請求権は失われない、としています。つまり簡単であっても仕事がありその仕事をしようとしていれば仕事をしているとみなす、ということです。私傷病でさえこのような判決になったのですから業務上の事由による鬱病であれば、会社にはさらなる責任が求められます。

この責任から逃れようとしたことが解雇の理由を告げなかったことにつながったのではないでしょうか。

【会社側の主張の一部について】

「原告Bは、Tシャツ、ジーンズにサンダルといった社内の服装マナー基準に違反する服装で出勤しており、(中略)所属長が幾度も注意したが、同原告は、マナー委員会が作成した服装基準・イラストには効力がないとか、茶髪の外国人に注意をするのかといった不合理な主張を繰り返し、服装を改めなかった」

「新しい業務を担当するよう何度も話したものの、原告Bの態度は一向に改善せず、そればかりか担当している業務に対する意欲について質問をされた際には、『意欲はこれといってありません』と明言することすらあった」

会社によれば、Bさんは上司に「何か言うときは全てメールにしてくれ」と要求した、ともいう。

これに対してBさんは

「当時の上司からパワハラ・嫌がらせを受けていたので、対応がぶっきらぼうになった」

と会社側の有責を主張してはいますが、態度意欲に問題があったこと自体は認めているように読み取れます。裁判所も、

(Bさんについて)円滑なコミュニケーションに問題が生じたこと、(中略)問題行動があり所属長からも注意がされていたことが認められる。

と会社側の主張を認めていることからも、態度意欲についてはBさんに責任がありそうに見えます。

そうであるならば強い調子ではありますが、「やる気がないやつは辞めてしまえ」というフレーズが頭に浮かびます。

それでも辞めないの自分の既得権益を守るためであり、生活がかかっているからです。

しかしそのような居座りは、会社側はもちろんのこと、やる気のある他の従業員にとっても迷惑です。Bさんの行動は、ドラマ半沢直樹の「やられたらやり返す」のつもりがやられてない人にもやりかえしている、ということになってしまっています。そのような居座りには会社側だけでなく、やる気のある他の従業員も一丸となって対抗し、職場の規律を取り戻さなくてはなりません。

【総論】

会社側の主張の一部は認められるが解雇は無効である、というのが地裁の判決です。

本件について私の立場からの総論としては、会社も従業員も悪いことをしてはいけないし、また悪いことに対する懲戒、報復は相応のものでなければならない、というものです。

懲戒についてはこのことを労働契約法にて、「使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする」と定めています。

再び半沢直樹のセリフで言えば、「やられたらやり返す。倍返しだ!」はやり過ぎです。ついつい倍返ししたくなってしまうのは心情的には理解しますが、相応に「やられたらやり返す!」で留めなければなりません。

 

(福岡市)TWO FACE社労士FP事務所 社会保険労務士 蓑田隆介

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TWO FACE社労士FP事務所 社会保険労務士 蓑田隆介